川床明日香のトコトコ、メトロ散歩。 ♯03 女優・川床明日香が、メトロに乗って新たな東京の魅力に出会いにいく小さな旅の記録。 知っているのに、意外と知らない街の歴史や文化を体験しに出かけます。 今日訪れたのは、東京メトロ日比谷線、人形町駅。 人形町は江戸歌舞伎の発祥の地でもあり、人形芝居の小屋もでき、そこに人形制作者や人形販売店などが集まったことから人形町という名前になったそう。 かつての人形町周辺(堺町・葺屋町)には、江戸歌舞伎を代表する芝居小屋である「中村座」や「市村座」があり、江戸の芸能・娯楽の中心地として栄えました。 江戸歌舞伎の始まりは江戸開府後の寛永元年ころ。京都から江戸に下ってきた歌舞音曲の名人猿若勘三郎が、猿若座(のちの中村座 ) を人形町に開いたことから始まり、次いで、泉州堺の村山又三郎が村山座(のちの市村座)を興し、人形町に歌舞伎上演の芝居小屋を建てたことがはじまりと言われています。 周辺には人形浄瑠璃をはじめ、説経芝居から見世物小屋、曲芸、水芸、手妻(手品)と安い料金で楽しめる小屋もたくさん建ち並び、大名から庶民まで多くの人々が、当時の代表的な娯楽だった芝居見物を楽しんでいたそう。 そんな人形町で最初に訪れたのは「明治座」。 明治座は、明治6年(1873年)4月、現在の日本橋久松警察署の南側に「喜昇座」として開場したのが始まり。明治12年(1879年)に久松座、明治18年(1885年)に千歳座と改称。その後、明治26年(1893年)に「明治座」と改称されましたが、いずれの間も日本橋人形町・久松町周辺に位置し、同じ下町の一角に歴史を重ねてきました。 人形町・浜町界隈に根付いていた江戸歌舞伎や劇場文化、さらには劇場内で食事を楽しむ日本独自の文化を現在に受け継いでおり、地域一体となって江戸からの伝統を守っている劇場です。 芝居はあらゆる流行の発信源。役者にあこがれ熱狂する当時の人々の姿は、今で言う「推し活」そのもの。 当時の大芝居見物は、芝居茶屋とセットの一日がかり。まず朝、茶屋に上がり桟敷で芝居を見、幕間には酒に肴、お茶やお弁当が桟敷に運ばれ、芝居が終わると茶屋でくつろぐという贅沢な遊びでした。そのため、周辺にはたくさんの老舗飲食店が立ち並ぶようになり、芝居の見物客や役者、寄席へ向かう人たちで周辺の小路は常に活気づいていました。 現在も残る「甘酒横丁」はその代表。 明治時代に入って甘酒屋「尾張屋」が繁盛したことからそう呼ばれるように。現在でも老舗の飲食店が軒を連ねます。 甘酒商店街で最初に立ち寄ったのは、“冷し甘酒”の張り紙に惹かれた「彦九郎」。京都で創業し、昭和26年に東京人形町に移店したお店。こだわりの食材で一つ一つ手作りのお菓子は日常からお祝い事の際にも親しまれています。 この日は甘酒と一緒にお店の名物彦九郎まんじゅうを店先でいただきました。 続いては、楽しみにしていた、「人形焼本舗板倉屋」へ! こちらのお店は明治40年(1907年)創業の100年以上の歴史を持つ老舗の人形焼専門店。 大人気のお店でこの日も朝から店頭には行列が。 お店の奥で手焼きしている人形焼を店頭でいただきました。 持ち帰りはもちろん、焼き上がったものをその場でいただけるのもこちらのお店の魅力。 焼き立ての人形焼は味わったことのない程の超絶品! 最後はお昼ご飯を求めて、人形町と縁も深い、「人形町 志乃多寿司總本店」へ。 いなり寿司を屋台で売り歩いたことから始まったこちらのお店は明治10年(1877年)に人形町で創業。店名「志乃多(しのだ)」は、歌舞伎の演目『葛の葉子別れ』の舞台である「信太(しのだ)の森」に由来しています。作中に狐が登場することから、「狐=油揚げ」「油揚げ=いなり寿司」という連想を経て、縁起の良い「志乃多」という店名が付けられたそう。 芝居小屋や寄席などが多く集まっていた当時の人形町では、観劇前や幕間に手や口を汚さずにサッと手軽に食べられるいなり寿司が大流行。いなり寿司と海苔巻きの詰め合わせの助六は、劇場のお客や役者への差し入れとしてはもちろん、多くの庶民のお昼ご飯としても愛されていきました。 明治座で公演のあったこの日もお客さんがひっきりなし。 いただいたのは7種類の味が楽しめる「変わり志乃多」7種セット。 POFILE 川床 明日香 /かわとこ・あすか 2002年7月10日生まれ。福岡県出身。 2014年「第18回ニコラモデルオーディション」にてグランプリを受賞(総勢11,256人)。近年の出演作に連続テレビ小説『虎に翼』(24/NHK)、映画『沈黙のパレード』(22)、『室町無頼』(25)、舞台『フロイス-その死、書き残さず-』(25)、ドラマ『LOVED ONE』(26/CX)に出演。NHK FM「サカナクション・山口一郎 〜Night Fishing Radio〜」にレギュラー出演中。舞台『春よ来い、マジで来い』、初主演映画『うるさいこの音の全部』など公開待機作品も多数。 出演・撮影・文字:川床明日香 ( @asuka_tokotoko ) 企画・編集・撮影・ヘアメイク:前田紗良 ( @sara0726 ) 撮影協力: 明治座 、 彦九郎 、 人形焼本舗板倉屋 、 人形町 志乃多寿司總本店 連載「川床明日香のトコトコ、メトロ散歩」#02は こちら