感情の揺らぎのなかで、凜と光る“新しいロマン”を体現する俳優・上白石萌歌 。繊細なツイードが映すのは、甘さと知性が交錯する冬の質感 。恋という枠を超えた感情の在り処が、時代のセンチメントを静かに更新していく 。 12月12日公開の映画「ロマンティック・キラー』で、’’恋しないヒロイン’’杏子を熱演。 上白石萌歌、ロマンを再定義 。 Photography: Manami Fukuda Styling: Ami Michihata Hair&Make-up: Nozomi Onda (Shiseido) Edit&Text: Sae Shinoda Profile / かみしらいし・もか 2000 年 2 月 28 日生まれ。鹿児島県出身。2011 年、第 7 回「東宝シ ンデレラ」オーディションにおいてグランプリを受賞し、芸能活動を開始。2012 年に俳優デビュー。主な出演作にドラマ『義母と娘のブルース』(TBS)、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)、映画 『366 日』などがある。2017 年より adieu 名義で歌手活動も行う。 12月12日公開の映画『ロマンティック・キラー』で主人公・杏子を演じる上白石萌歌 。ゲームとチョコと猫を生きがいとし、恋愛にはまるで興味がない杏子だが、魔法の力でロマンティック・トラップを仕掛けられ、押し寄せるイケメンたちと距離を縮める____。 毎日目覚めたら違う人生が待っているような撮影の日々 「台本をいただいたとき、ここ数年でこんなにおもしろ台本は読んだことがない―というくらい、ページをめくる手が止まらなくなって、読みながらずっと笑ってしまいました。コミックの原作ももちろんですが、英(勉)監督の手にかかると、よりコメディ要素が増幅していて、私も早くこの作品の世界に飛び込んでみたいという気持ちになったのを覚えています。実際、目まぐるしく物語が展開するので、撮影中は毎日目覚めたら違う人生が待っているような楽しさがありました」(上白石萌歌、以下同)。 演じた主人公・杏子については「潔くて、本当に魅力的な女の子」との第一印象を抱いたと話す。 「原作者の百世さんに初めてお会いしたとき、『杏子はハンサムであってほしい』と言っていただいたんです。たくさんの見目麗しいイケメンたちが登場するけれど、精神的な意味では杏子がいちばんしなやかで、ハンサムであってほしい。それがこの作品の柱だなと思ったので、なるべく堂々とカッコよく演じるように心がけました。杏子と自分の共通点を考えると、私もいくつかの好きなものがあれば自分を満たせる。生きていけるタイプかなと思います。私の場合は映画と音楽と、おいしい食べ物ですかね。逆に違うところは、杏子のような意志の強さは私にはないと思います。「絶対恋しない」と思っていても、私なら途中で折れちゃうだろうなぁ」 今作は原作コミックで人気を博したのみならず、全世界配信でアニメ化もされており、待望の映画化となった。 「このようにすでに広く愛されている作品の役を演じさせていただくときは、もちろんプレッシャーがあるのと、できあがった世界観のなかでどうやって自分らしさを出していこうか、ということを考えます。とにかく自分がその作品を愛していれば、きっと成立すると信じているので、誰よりも作品のファンになって役を全うしよう、と決めて向き合いました」 毎日居残りして挑んだ7分間のアクションシーン 劇中で大きな見せ場となるのが、7分間ほど続くアクションシーンだ。 「今までアクションの経験はほとんどなかったので、最初は頭が真っ白になって「できるわけない!」と思ったんですが、アクション部のみなさんが本当にきめこまやかに指導してくださったおかげで形になりました。実は何日間か泊まりがけで撮影したんです。シーンを細かく切って少しずつ習得していって、別シーンの撮影後に居残りして練習もしましたし、モップのような棒をお借りして毎日家で回す練習をしていました。普段とはまったく違う筋肉を使って、満身創痍でやりました。このシーン全部を撮り終わったときには、ぶっ倒れるような達成感がありました。これが杏子が感じている疲労感や筋肉痛なんだなと思うと、それすらもやりがいに感じました」 高橋恭平(なにわ男子)、木村柾哉(INI)中島颯太(FANTASTICS)とのクアトロ主演となった今作 。同年代の俳優が集まった撮影現場は活発なムードだったという。 「みなさん、いろんなバックボーンを抱えた役でしたが、原作から飛び出してきたような完成度で現場にいらっしゃっていて。だから撮影現場はみんなが持っているものをぶつけあうような感じで、楽しく撮影していました。私は高橋恭平さんと生年月日がまったく同じなんです。生まれた年も一緒なのにこんなに違うか、っていうくらい性格は全然違うんですけど、でもそれだけで親近感を持っていました。高橋さんは一見クールそうですが、とっても盛り上げ上手で。同じ関西出身の中島さんとおふたりで現場のムードメーカー的存在になってくれました。現場はずっと盛り上がっていて、小学生がやるようななぞなぞをしたりとか、私が動画で見てハマっていたスリックバックという空中ウォークみたいな歩き方が流行っていて、みんなで練習したりとか。共演者のみなさんはダンスがお上手だからスリックバックもすぐマスターされてたんですけど、いちばんへたくそな私が『やってごらん』って偉そうに見てる、っていう(笑)。ひたすらセットの隅っこでやっていましたね」 そんな共演者たちが演じるイケメン同級生に囲まれ、杏子は胸キュンシチュエーションを強制的に経験させられる。"致死量"といえるときめきを味わうことになるが、自身が最近ときめいたことといえば? 「お散歩している犬を見たときです。強風に吹かれて自分の毛で目が隠れちゃっている犬とか、口が隠れてあわあわしている犬を見ると、たまらなくときめいて。こんなかわいい生き物を無料で見ていいのか?という気持ちになります」 大好きな人への愛情や感謝はきちんと伝えるタイプ 今作は恋愛をテーマにした作品かと思いきや、上白石が伝えたいメッセージはその一歩先にある。 「いまって恋愛の形にもいろいろあるうえに、恋愛をしなきゃ幸せになれないという世界でもないですよね。それでもやっぱり、人と一緒にいることって楽しいんだよ、恋に落ちなくても、仲間を大切にしていたら人生がもっと楽しくなるよ、というテーマがこの作品には隠れています」 杏子が発する「大好きって伝えたい」という台詞にも、そのメッセージが込められている。 「私は大好きだと感じる相手___たとえば家族や親友に対して、きちんと『大好き』を表現するタイプです。恥ずかしがり屋なので、よく手紙を書きます 。両親の結婚記念日や母の日、誕生日なんかには手紙を贈り合う文化が、私の家族には根づいているんです。姉とは、たとえばお互いの舞台の初日に「頑張ってね」って勇気づけるようなメッセージをポストカードに書いて、楽屋に置いて手を合わせていく、みたいなことをしあいますね 。いつも支えてくれる親友にも、感謝をマメに伝えるほう。お互いに愛情を投げ合うような、いい関係性ができていると思います」 最後に媒体名にちなんで、いまもっともディグりたいものを聞いた。 「NHK Eテレの「ねほりんぱほりん」という番組がディープでめちゃくちゃおもしろくて、家にいるときずっと流しています。あとはシガー・ロスの音楽。もともと好きなのですが、2月に来日公演を見てからますますハマっています。私もアーティスト活動をしているひとりとして、こんなライブ空間がつくれたら素晴らしいな、と憧れましたし、長い時間をかけて温められてきた音楽は深みがあって、本当にカッコいいなと思いました」 トップス¥10,300、スカート¥23,700/ディーゼル リング¥15,200/ドーターズジュエリー (¥7,500/イリスフォーデンワークス)